今年もまた春が来ました。亀田さんの庭に桜の花が咲き、樋口さんの庭ではだいぶ前から白いモクレンが咲き誇っています。

朝の驟雨がお昼にはおさまって青空がのぞいたので、妻君と一緒に近くの朝比奈の滝まで散歩に出かけました。土饅頭のようなうてなの上には、朝の光をさんさんと浴びて、無数のスミレが可憐な水色の花をつけています。

私は漱石の「菫程の小さき人に生まれたし」という俳句を思い出し、生まれ変わったら来世ではこの美しい植物、あるいはその上空を飛び回っていたルリタテハになりたいと念じたことでした。

漱石は絵も字も名刺までもとても小さくて細いのを好む人で、それがこの作家の独特の繊細さと狂気すれすれの神経過敏の度合いを物語っていると思います。
どうして急に漱石を思い出したかというと、私の家のカレンダーが漱石だからです。1年12か月の12枚全部が、漱石が実際に書いた和洋の数字でできているという、世にも不思議なカレンダーを毎日眺めているので、散歩しているときにもふいに漱石が出てきたのでしょう。

朝比奈の滝が昨夜来の雨で増水して音を立てて落下しています。すぐそばには鎌倉市が2,3日前に立てた「国史跡朝夷奈切通し」の看板があって、当地の由来が4カ国語で説明されています。